三奇楼、という宿屋を改装したゲストハウスがすごくいいらしいことを何かで聞いたのがもう7、8年くらい前だったと思います。ずっと、行きたい気持ちが心の底にありながら、表面に上がってくるまで時間がかかりました。
初めての東京場所を終えて、次どこでやろうか場所を探しても、卒業旅行シーズンでどこもかしこもいっぱい。マッスル・コミッショナーと神田北口のベローチェで悩んでいたとき、不意に「吉野の名前難しいあそこ」が浮かんだのでした。
そこから先はとんとんと話が進み、鍋軍団が愛するぽん酢「宮瀧」の聖地巡礼なんかも兼ねて、なに気に初めてとなる吉野場所が組み上がりました。
雪が舞う極寒の吉野に、ゆるゆるとばらばらの6人が集合して、カブを先頭にした車列を形成しました。車列は宮瀧ぽん酢、地鶏、巨大ぶなしめじ、葛の手延べそうめん、猩々、八咫烏などを確実に集めて回り、吉野のものを使ったお鍋のできあがり。冒頭写真のサクラビールは、吉野にちなんでコミッショナーが乾杯用に選びました。
川がおだやかで陽がやわらかくてのんびりムードなのに、どこか引き締まった空気も感じられて、久々の奈良分補給ができました。あと数週間も経てば桜が始まって、のんびりムードではなくなるのかもしれません。
帰りも現地解散で、ごく自然に、てんでんばらばらに散っていきました。みんなよう来たよな、奈良好きやなあとそのときしみじみ感じました。
時間があったので奈良に戻り、船橋通りにできたおむすび屋さんを訪れたり、きたまちのまめすずさんに行って休んだりしました。誰もがかつてのように当たり前の日曜日の午後として過ごしました。これからそれぞれ遠くへ帰るだなんて、特にまめちゃんは想像してもくれませんでした。
京都で遅れてきた新幹線に乗ると、先が詰まっているとしてずっとのろのろ進みました。それでいい。奈良から離れるのだから、ほんまはそれくらいゆっくり離れていくのがいいのだ——。
最寄り駅に着いたときのビル風は、奈良以上にひんやりとしていました。