muscle_nabe’s blog

奈良と鍋を愛するマッスル鍋の公式ブログです。

公共施設に入ってる謎喫茶を愛でたい

公共施設に入っている謎喫茶が大好きです。

営業時間も、看板に書かれているコーヒーの銘柄も、運営母体も、それに雇われる妙に面倒見のいいおばちゃんの生い立ちも、ソフトクリームの安さの理由も、みんな謎。『耳をすませば』に一瞬出てくる図書館の売店のように、簡素でもあり雑多でもあり、ゆるくてあまり稼ぐ気がなさそう。チェーン店にも、いや個人店にも無いあの雰囲気に私が惹かれるのは、昔も今も変わっていません。

地元の公民館に行くと必ず喫茶コーナーに寄りたがる幼い私に、親は「大きなってから行き」と言うばかりでした。が、いざ成人してみたら、もうこの手の謎喫茶って絶滅危惧ⅠB類くらいの段階にまで来ているような。

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最近まで頑張っていた大森東図書館の喫茶軽食コーナー。復活の可能性は…?

公共施設自体も建て替えなんかでどんどんスタイリッシュになって、謎喫茶だったところに大手カフェチェーンが入ったり、洗練されたコーヒー屋さんに取って代わったりしています。それは間違いなく利用者にはサービスアップなんでしょうが、一抹のさみしさを感じずにはいられません。

そんな中で理想に近いかもと思ったのは、ある国営施設の喫茶コーナーでした。広々として明るいけどちょっとくすんだ感じの店内と、角にぶつかったら痛そうな机や椅子が、いにしえの学食や手つかずのサービスエリアを想起させます。

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北海道フェア実施中!とのポップに惹かれ、限定メニューにあった「富良野オムカレー」を注文。出てきたのが上の写真です。ひらたい卵、なんか知ってる味のルー、そして福神漬富良野は…まあ…富良野、うん、富良野は、富良野は——

1000000万点!

こういうやつなの!これが国の取りまとめた、日本国のすべてのオムカレーの標準値たる一品なんです。食券を渡したらそれがすんと出てくる。ここではそうでしかないのです。喫茶というか、供食設備が正しいのかも。公共施設やし腹減ってる人間ぐらいおるやろ、トイレがあってなんで食事が無いんや、そんな生理的なレベルの意見に寄り添うべく生まれた設備なのです。これは決して嫌味でもなんでもありません。

そこに他店並みのサービスを求めるのは端から間違っているのに、舌も目もへんちくりんな方向に肥えた現代っ子のせいで、謎喫茶もオムカレーのように「限定」だとか「ご当地」だとか、よくある"特別感"を無理して出さないといけなくなっているのです。それに目が留まった私も人のことは言えません。何でもかんでも小綺麗で品質だけ高いものが好まれる今だと、つたない。物足りない。謎喫茶もそう思われる存在なのかもしれません。

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京都文芸会館の名店グリシンも閉店して勢い絶頂の前田珈琲に。シュッとしました。

気取らず、せかせかしていない。すんなり入れて、ほどよく腹を満たせ、ほどよくくつろげる。多少いいかげんなくらいがちょうどいい。おしゃれなカフェや、レトロな純喫茶とも違った味わいが謎喫茶の魅力なんですが、伝わりにくいよなあ。合理化の名のもとに中途半端なものが消されていく今、愛おしむべき存在だと思っています。